2026-08-08
月収の数字は、同じ調査の中でも労働時間の区分が変わると大きく動きます。障害者雇用実態調査(厚生労働省・令和5年度)には、労働時間の区分ごとの月収が示されています。本記事で取り上げるのは、そのうち週30時間以上と週20〜30時間の2つです。どの障害種別でも、この2つの区分の間には大きな開きがあります。平均値だけを見ていると、その構造は見えてきません。以下、区分ごとの実数を整理します。
障害者雇用実態調査(厚生労働省・令和5年度)による月収の実数を、障害種別ごと・労働時間の区分ごとに整理すると、次のようになります。金額はいずれも月額です。
いずれも障害者雇用実態調査(厚生労働省・令和5年度)における、障害種別ごとの月額賃金の実数です。週30時間以上と週20〜30時間という2つの区分だけで、同じ種別の中でも金額が大きく変わります。4つの種別すべてに共通しているのは、週30時間以上の月収が週20〜30時間の月収を上回るという方向そのものです。労働時間が長い区分ほど月収が高いという構造が、種別を問わず表れています。この数字の読み方は、次の見出しのテーマです。
平均だけを見て「障害者雇用は賃金が低い」と受け取ると、実態を読み違えます。障害者雇用の平均賃金には、短時間勤務や担当業務の限定によって月収が低く出やすい構造が含まれているからです。この構造を踏まえずに平均だけを比べると、種別間の優劣であるかのように誤解されやすくなります。
先に見た身体障害者の平均235,000円は、障害者雇用実態調査(厚生労働省・令和5年度)における数字です。週30時間以上で働く人の268,000円と、週20〜30時間で働く人の162,000円が混ざった結果、この金額になっています。平均は、どちらの働き方をしている人が多いかによって変わる数字であり、賃金水準そのものを表す数字ではありません。同じことは知的障害者・精神障害者・発達障害者の平均にもあてはまります。
平均という1つの数字は、区分ごとの人数の比率によって位置が動く数字です。週20〜30時間で働く人の割合が高ければ平均はその実数に近づき、週30時間以上で働く人の割合が高ければ平均はそちらの実数に近づきます。平均値は労働時間の分布を含んだ数字であり、内訳を分けて初めて、区分ごとの実数が見えてきます。求人票や紹介記事に載っている「平均月収」という表記だけでは、自分が想定する労働時間に近い金額かどうかは分かりません。区分ごとの実数と照らし合わせて初めて、実態に近い金額をつかめます。
月収を左右するのは、障害の種別だけではありません。障害者雇用実態調査(厚生労働省・令和5年度)が示す実数を分けて見ると、勤務時間・雇用形態・職種・担当業務という4つの要因が重なって金額を決めていることが分かります。
勤務時間は、本記事で見た週30時間以上と週20〜30時間の差がその代表例です。同じ職種・同じ担当業務であっても、契約する時間数が違えば月額の賃金は変わります。雇用形態は、正社員か契約社員か、あるいは短時間の有期雇用かによって賃金テーブルが変わります。賞与や昇給の仕組みも、雇用形態ごとに異なる要素です。職種は、事務・製造・サービスなど担当する仕事の種類です。求人ごとに求められる技能や経験が違うため、同じ勤務時間でも職種によって賃金水準は変わります。担当業務は、同じ職種の中でも任される業務の範囲や責任の重さです。補助的な業務を担当する場合と、判断や調整を伴う業務を担当する場合とでは、同じ職種でも金額に差が出ます。
この4つが組み合わさって月収が決まるため、障害の種別を月収の理由に単純化すると、実際の要因を見落とします。同じ障害者雇用という枠組みの中でも、月収の実数はこの4つの組み合わせ次第です。勤務時間・雇用形態・職種・担当業務は、いずれも求人票の募集要項に明記される項目です。
労働時間の区分は、月収に直接影響します。通勤が発生する働き方で制約になりやすいのは、移動にかかる時間の分だけ、1日の中で仕事や生活にあてられる時間の配分です。在宅就労は、この通勤という制約を切り離せる働き方です。勤務先が遠方にあっても、日々の移動そのものが発生しません。
ただし、実際に週30時間以上働けるか、週20〜30時間にとどめるかは、体調や雇用契約、職場の制度によって決まります。在宅で働けば労働時間や月収が自動的に伸びるわけではありません。在宅就労が広げるのは、労働時間そのものではなく、通勤という制約を外した上で働き方を選べる選択肢の幅です。体調に波がある人にとって、週20〜30時間の区分は無理なく続けられる選択肢になり得ます。安定して長時間働ける人にとっては、週30時間以上の区分も選択肢の一つです。
週30時間以上を選ぶか、週20〜30時間を選ぶかは、体調や生活の状況によって人ごとに異なります。どちらを選んでも、勤務時間・雇用形態・職種・担当業務という4つの要因は変わらず月収に影響する構造です。在宅か通勤かを検討する際も、労働時間の希望と体調や生活の状況を照らし合わせることが出発点です。
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